我が子を陽キャにするために
俺は陰キャだ。
陰キャと言ってもピンキリだが、俺の一番の特徴は"人見知り"で、新しいコミュニティに身を置くたびに人間関係を築くのに苦労してきた。
しかし長年人生をやってきた身としてハッキリしていることは、間違いなく人は人と何かをしてるときが一番楽しいということで、その点において人見知りという欠点は周りの人たちとの時間や機会を大きく奪ってしまうという事実である。
もちろん一人でも楽しめることはたくさんあるが、一人ではリアルタイムでの感情の共有が難しいという点でどうしても劣る。
近年ではそれを補ってくれる要素を有するSNSというものが台頭しており、例えば一人で外食をしたときに写真を撮って投稿すれば擬似的に共有出来るし、一人で旅行して撮影した風景も評価してもらうことが出来る。
それは一つのコミュニケーションの形として更に発展して行くべき要素だと思う反面、だからといって現実世界での近しい人たちとのコミュニケーションをないがしろにしていい理由にはならないとも感じている。
日本では基本的に、保育園、小学、中学、高校、職場など、1日のうちのとんでもない時間をそれらの主要なコミュニティで過ごすことになる。
だからこそ、そこでたくさんの人と感情を共有出来る方が、より楽しい時間が多い人生を歩めることに違いないからである。
息子には、特にそれらのコミュニティにおいて人見知りすることなく良いスタートを切って欲しいし、良い人間関係を築いてもらいたい。
そんな人物になってもらうために親として何が出来るか。
客観的に感じるのはまず自分が陽キャにならないといけないということである。
うーん、無理!
ポケットミニオン-ポケミニ-
???
「ジェイナ。ジェイナ!起きなさい!今日はアントニダス博士のところに行く日でしょ?」
ジェイナ
「うーん…母さん。もうちょっとだけ寝かせて。それにまだ私はここにいたいの」
マダム・ゴヤ
「ダメよ。あなたが野生のムロゾンドに引きずり回されてるのを助けてから3年ちょっと。もう心も体も十分に回復してるし、そもそも12歳の誕生日になったら出て行く約束だったわよね?」
ジェイナ
「でも…私はこれから何を頼りに生きて行けばいいの。まだ働くことなんて出来ないし、一人は無理よ」
マダム・ゴヤ
「だからアントニダス博士のところに行くの。さぁそのキュートな姿をベッドから出て見せてちょうだい」
ジェイナ
「わかったわ。今までありがとう、母さん…」
ジェイナは旅立ちの準備を済ませると、マダム・ゴヤが作ってくれた最後の朝食を平らげた。
それはパンの上にゴーヤを乗せてマヨネーズをかけトーストしたもので、マダム・ゴヤの得意料理だった。
マダム・ゴヤ
「誕生日だからファンネルケーキも焼いたけど食べる?」
ジェイナ
「ごめんなさい。それを食べたら私、行けなくなっちゃうから」
二人は長いハグを交わすとジェイナはマダム・ゴヤ邸を後にした。マダム・ゴヤの目からは涙が止めどなく溢れていた。
アントニダス博士の研究所はこのマサラタウンの中心部に位置し、マダム・ゴヤ邸のすぐとなりだがジェイナには縁のない場所であった。
ピンポーン
ジェイナ
「すいませーん。アントニダス博士に用があってきたんですけど」
助手
「あーはいはい、ジェイナちゃんね、話は聞いてるよ。でもごめんね、今頃アントニダス博士はマルハンのトキワ店で新台狙いで並んでると思うんだ」
ジェイナ
「そうですか。いつ頃戻ってきますか?」
助手
「それが僕たちにもわからないんだよ。新台が取れなかったらすぐ戻ってくるんだけど」
ジェイナ
「取れたら?」
助手
「取れたら最悪夜かもしれない」
ジェイナ
「そんな…」
助手
「まぁとりあえず中に入りなよ。話は聞いてるからジェイナちゃんの今後について説明するよ」
ジェイナ
「ありがとうございます」
ジェイナは研究所の中に入り、促されるまま席に着いた。
助手
「君はポケミニのことを知っているかな」
ジェイナ
「私を襲ったドラゴンのことですよね」
助手
「そう。ムロゾンドもポケミニだね。でもムロゾンドだけじゃない。今各地で凶暴化し人々の生活を脅かしている存在のことを僕らはポケミニと定義してるんだ」
ジェイナ
「そうなんですね。それが私と何か関係あるんですか?」
助手
「実は…君には、ジェイナちゃんにはそのポケミニを狩る存在、ポケミニハンターになって欲しいんだ」
ジェイナ
「私が…?私にはポケミニを狩れるような力はないです。そんなの無理に決まってます」
助手
「戦うのは君じゃない。目には目を、ポケミニにはポケミニを。ジェイナちゃんにはポケミニを育て、戦わせて欲しいんだ」
ジェイナ
「そんなの無理です。何で私なんですか。私じゃなくたっていいじゃないですか」
助手
「ポケミニは魔力に惹かれる存在。ジェイナちゃんはフロストボルトが使えると聞いてるけど、それはもうポケミニをコントロールするには十分過ぎる資質なんだ」
ジェイナ
「でも、私はお金もないし住むとこもなくて…ポケミニハンターなんてやるような余裕はありません」
助手
「それについては心配いらないよ。ポケミニハンターは国から最大限の援助を受けることが出来る。このポケミニ図鑑のハンター資格証のページを提示すれば各地でいくらでも好きなものを食べられるしどこにでも泊まることが出来るんだ」
ジェイナ
「それは良い話だとは思いますけど…」
そのとき、もの凄い剣幕で女の助手が駆け寄ってきた。
女助手
「大変ですっ!アントニダス博士が!」
助手
「どうしたの?」
女助手
「アントニダス博士が…新台は取れたけど財布を忘れたらしくて、あと30分以内に遊戯を始めないと空き台として整理されてしまうみたいなんです!」
助手
「それは大変だ!ジェイナちゃん、トキワシティまでの道にはポケミニがうじゃうじゃいて魔力を持たない僕たちはそこを通ることが出来ない。君が、君だけがアントニダス博士に財布を届けることが出来るんだ」
ジェイナ
「だから何なんですか」
助手
「今からそこにあるポケミニが入ったミニオンボール3つの中から好きなポケミニをパートナーとして連れて行って、そして時間内にアントニダス博士に財布を届けてくれ」
ジェイナ
「そんな、見たことも聞いたこともないのに出来るわけないよ!」
女助手
「ジェイナちゃん、新台が新台でいられるのは新台の期間だけ。それを過ぎたらもう新台ではなくなってしまうの。マダム・ゴヤの娘として3年間過ごし、今その関係が終わってしまったあなたにならこの意味がわかるわよね」
ジェイナ
「!!!」
女助手
「ジェイナちゃん、あなたがやるのよ」
ジェイナ
「やります、私が届けます!」
ジェイナはポケミニボールが並んだテーブルの前に立った。
つづく?
投資詐欺に遭った女性が自殺した件について思うこと
今年の11月の報道で、2年前に22歳の女性が投資詐欺に遭い自殺に追い込まれた事件を知った。
大学の同級生の儲け話に乗っかってしまい、促されるまま消費者金融3社から計150万借りて投資をしたが、儲かるどころかその元手すら返って来なかったという。
そしてその後は返金のために行動していたようだが、うつ病を発症するまでに精神的に追い込まれ自ら命を絶ってしまった。
当然こういう話は氷山の一角で、日々誰かしら被害に遭っているものだという認識はあったが、この女性は一緒に返金を求めて詐欺グループと戦ってくれている交際相手がいたことと、母親も相談に乗ってお金を何とかしようと行動してくれていたという状況で亡くなったということもあり、どうにもやりきれない気持ちになってしまった。
俺も以前ブログで書いたように、パチンコで200万以上借金して債務整理した経験があったし、もちろんそういう状況というのは往々にして視野を狭くさせるものなので「死んだ方が楽だな」程度のことは当然思ったりもしたが、やがて時間が解決してくれた。
怪我、病気、借金、失敗、挫折、別れ
事の大小はあれど、生きていると幾度となくネガティブな出来事に見舞われて瞬間的に心が辛くなる。
しかし瞬間的に100だった心の負担も5年、10年と時間が過ぎて行くのに伴い50になったり10になったりと確実に減っていき、減った分だけ視野が広がり自分の幸せに目を向けることが出来るようになる。
それを思うとどうにかこの女性も生きて乗り越えて欲しかったなという気持ちが生まれるのはもちろんのこと、もし周りに同じような状況の人がいたとして自分に助けられるのかということを考えさせられる。
これは単純な話ではないし、具体的な答えは簡単には出てこないが、少なくとも相手の立場に立ってものを考える能力を磨き続ける必要性を感じるし、それをフルに活用して他人の愚痴や相談にはピンポイントで心が楽になる言葉をかけられるように日頃から意識していきたい。
パチ屋で知らない男に10万円貸した話⑤
男との待ち合わせ当日。週末のまだ朝マックの時間帯。男は時間通りに通称"角マック"と呼ばれる熊本屈指の待ち合わせポイント、東京でいうところのハチ公前に現れた。
そのマクドナルドは1階と2階に分かれていて、1階は席の間隔が近いだけでなく仕切りもないのに対して2階は申し訳程度に仕切られていた。
そこで今回は、話し合いの内容が内容なだけに2階で話し合いをすることにした。
話し合いの最大の目的はもちろん、男の「10万円を返済します」という旨の発言を引き出し、ガラケーの録音機能でその音声を収めることだ。
俺はあらかじめシミュレーションしたとおりマフィンとドリンクの乗ったおぼんをテーブルに置き席に着くと、コッソリとガラケーにて録音を開始した。
結論から言うと目的は達成することが出来た。
だがやはり男の態度や言動から、本気で全額返済しようという意思は感じられず、形式的にこちらの問いにそれっぽく答えていっているようにしか思えなかった。
そんな不毛な話し合いの末、とりあえず来月の返済日に今月分もまとめて2万円振り込むということで話がまとまり解散となった。
そして次の返済日。
当然といっていいだろう、連絡はなかったしお金も1円たりとも振り込まれていなかった。
といった具合にやってくれるはずだった12年前の俺であったが、この頃にはすっかり当初の熱量は残っていなかったらしく、とうとう面倒くさいという感情に飲まれ諦めてしまった。
こうして俺はパチンコ屋で話しかけてきた知らない男に10万を貸した挙げ句、全額踏み倒された。
この話は今まで誰にもしたことがなかったし、する理由もないし、何より情けない話なので墓場まで持って行くものだと思っていたが、どうやら人の考え方というものは何かをきっかけに大きく変わることもあるらしく、今回この話を公開することにした。
この話はこれで終わりだが、その発端となった事件とそれに関して思うことを次回綴ってみようと思う。
長々やった割に大したオチがないことだけ最後に全力で謝罪します。申し訳ありませんでした。
[後日談]
2年前くらいに男のLINEアカウントが電話番号で自動的に登録されてたから「お久しぶりです。もう金は返さなくていいですよ。元気ですか?」とLINEしてみたが返ってこなかった。
そしてしばらくしてもう一度見たらアカウントが消えていた。
恐らくまぁ都合が悪いなと感じてアカウントを削除したのだろう。
特に恨んでもないし10万円に未練もないが、もし今上手くいってるのなら連絡して欲しいし笑い話として語り合いたいものだ。
パチ屋で知らない男に10万円貸した話④
振り込み完了の連絡が来ることを半信半疑で待っていたが、夜になっても一向に連絡は来なかった。
あーやっぱりダメか、と思いつつ電話をかけてみる。
無視されるパターンも容易に想像出来たが、意外にも男はすぐに電話に出た。
「はい」
はいじゃねぇよ。まず間髪入れずに謝れ。
10万借りて借用書も書いておいて、何で初回の返済すら出来なければ返済遅れますの連絡も出来ねぇんだ。などと思うところはあったが冷静にやり取りを開始した。
「返済日今日ですけど振り込めました?」
「それが今月は厳しくて振り込めませんでした、すいません」
踏み倒す気なのか、本当に金がないのか、もの凄くタスクの処理をするのが苦手なのか何なのかわからないが、ハッキリしてるのはこのまま何もしなければ金は返ってこないということだ。
そこで次の手を打つことにした。
弁護士もののドラマなどで良くある、会話をコッソリ録音して決定的な証拠にするというものである。
恐らく正しく必要項目が記載されている借用書さえあれば十分のはずなのだが、当時の俺はこの異常な状況の渦中にあって興奮状態に陥っており、四輪車でいうところのアクセルの隣にあるはずのブレーキが備わっていなかった。
「今後の返済について話し合いたいので下通のマクドナルドで会ってもらってもいいですか?」
「わかりました」
それはいいのか。
本当に掴みどころがない男だ。それとも何か計算しての行動か。
こうして、すんなりと日時も決まり、男と再び会うことになったのであった。
つづく
パチ屋で知らない男に10万円貸した話②
男のケータイにはパスワードが設定されていなかった。
早速メールを開いてみると、同じ女性の名前がずらっと並んでいて、それを2、3通読むとすぐに実家の母親からのものだとわかった。
心配する母親と、それに必要最低限の返事をする息子というどこにでもありそうなやり取りに拍子抜けした格好になったが、これ以上見る必要もなさそうだったので男のケータイを閉じて打っていた台に戻った。
そこからのパチンコの展開は全く覚えていない。極端なまでの非日常に身を置いたことで、文字通りそれどころではなくなってしまっていた。
そんな中、男が1時間もしないうちに戻って来た。そして開口一番
「ダメでした」
とポツリ。
いやダメでしたじゃないが。
「1万円返せるんですか?」
「今日は無理ですね。今度まとめて10万返すんであと9万貸してもらえませんか?」
何を言っているんだこいつは。
パチ屋で話しかけてきた見ず知らずの男に10万?
当然飲めるはずもない。こちらはリスクしかないのだ。
しばらく問答が続いた後、俺は10万を貸すことになり、二人揃ってパチ屋を後にした。
つづく
パチ屋で知らない男に10万円貸した話③
急遽合計10万という大金を知らない男に貸すことになったが、決め手は借用書を書くという一言だった。
なるほど、借用書があれば最悪法的手段を使えば取り返せるのかもしれないなと思ったのである。
もちろんそれだけではない。
普通に生きていたらこういう経験をすることは無いだろうという好奇心が生まれていたことと、当時お金に余裕があったことも手伝って、12年前のアホは借用書を書いてもらうためノコノコと男のアパートへ同行することに決めたのである。
どうやら男のアパートは歩いて行ける距離にあるらしい。知らない男に着いて行きながらいろんなことを頭の中でシミュレーションしていた。
部屋に仲間がいて襲われたらどうするか。
部屋に着いたら先に入ってもらって、俺が後から入り、異変を感じたら逃げるか。
襲われたときのために脅しながら逃げるための包丁でも買って行くか。いや、しかしなぁ。
そんなことを考えていたら男の部屋に到着した。いろいろ考えた割に結論は"やばそうになったらとりあえず逃げる"だった。
「どうぞ」
部屋の間取りは典型的な1Kで、居間に通された。
そして男は真っ白な手のひらサイズのメモ帳を用意すると、早速借用書を書き始めた。
「借用書の書き方わかるんですか?ケータイで調べるんでその通りに書いてもらっていいですか」
俺はすかさずツッコミを入れた。
それも当然の話で、渡された"借用書のようなもの"に効力がなければただの紙クズでしかないからだ。
「わかりました」
男の了承を得ると俺は、ガラケーで借用書の書き方を調べながら書き方を指示していった。
そしてそれほど時間を要することなく、あっさりと借用書は完成した。
それを確認のため手に取り見直す。
一番上にはひらがなで『しゃくようしょ』の文字。
仮に漢字がわからないにしてもお前の持ってるガラケーで文字を入力すれば漢字を表示してくれるというのに不誠実極まりない態度だなと思ったが、ひらがなだから無効ですと突き放すほど法は無情ではないだろうとそこはツッコまなかった。
返済の条件はこうだった。
・翌月以降の毎月30日に1万円ずつ10回、指定の口座に振り込む。
・利子は無し。
知らんやつに大金を借りておいて利子の申し出すらしないとは厚かましい奴だと思ったが、こちらから利子付けろとは言うのも違うと思ったのでそこもツッコむのはやめておいた。
借用書を受け取った後は、コンビニで金を下ろして9万を渡して解散となった。
何やってんだ俺は。バカだな。
そう思いながらも最悪法的手段を使ってやるという悪戯な気持ちも混在していた。
そして翌月。
最初の返済日はやってきた。
つづく