パチ屋で知らない男に10万円貸した話④
振り込み完了の連絡が来ることを半信半疑で待っていたが、夜になっても一向に連絡は来なかった。
あーやっぱりダメか、と思いつつ電話をかけてみる。
無視されるパターンも容易に想像出来たが、意外にも男はすぐに電話に出た。
「はい」
はいじゃねぇよ。まず間髪入れずに謝れ。
10万借りて借用書も書いておいて、何で初回の返済すら出来なければ返済遅れますの連絡も出来ねぇんだ。などと思うところはあったが冷静にやり取りを開始した。
「返済日今日ですけど振り込めました?」
「それが今月は厳しくて振り込めませんでした、すいません」
踏み倒す気なのか、本当に金がないのか、もの凄くタスクの処理をするのが苦手なのか何なのかわからないが、ハッキリしてるのはこのまま何もしなければ金は返ってこないということだ。
そこで次の手を打つことにした。
弁護士もののドラマなどで良くある、会話をコッソリ録音して決定的な証拠にするというものである。
恐らく正しく必要項目が記載されている借用書さえあれば十分のはずなのだが、当時の俺はこの異常な状況の渦中にあって興奮状態に陥っており、四輪車でいうところのアクセルの隣にあるはずのブレーキが備わっていなかった。
「今後の返済について話し合いたいので下通のマクドナルドで会ってもらってもいいですか?」
「わかりました」
それはいいのか。
本当に掴みどころがない男だ。それとも何か計算しての行動か。
こうして、すんなりと日時も決まり、男と再び会うことになったのであった。
つづく